「朝起きてすぐ時計が見える」「コンタクトの乾燥から解放される」など、メリットの多いICLですが、大切な目玉にレンズを入れる以上、病気のリスクは絶対に知っておきたいですよね。
その中でも、患者様から「白内障」と同じくらいよく質問されるのが「緑内障(りょくないしょう)」についてです。
緑内障とは、目の中の圧力(眼圧)が高くなることなどが原因で視神経がダメージを受け、少しずつ視野(見える範囲)が欠けていってしまう病気です。一度欠けた視野は二度と元には戻らないため、非常に怖い病気として知られています。
結論からお伝えしますと、現在のICL手術(ホールICL)が原因で緑内障になるリスクは、昔に比べて劇的に(ほぼゼロに近い水準まで)低下しています。
しかし、だからといって「絶対に眼圧が上がらない」わけではありませんし、事前の検査で「あなたは緑内障になるリスクがある目の形をしています」と判明した場合は、安全のために手術をお断りすることもあります。
本記事では、ICL手術と緑内障の関わりについて、正しい知識とクリニックでの対応を分かりやすく丁寧に解説いたします。
「ICLで緑内障になる」と言われていた理由と現在の安全性
「ICLを入れると緑内障になる」という噂。実はこれ、過去に使用されていた「古いレンズ」の時代の情報がネット上に残っているからなんです。
昔のレンズ(穴なし)が抱えていたリスク
私たちの目の中には、「房水(ぼうすい)」という栄養分を含んだ透明な水が常に作られ、そして目の外へと排出されることで、目の中の圧力(眼圧)を一定に保っています。
ICLレンズは、角膜(黒目)と虹彩(茶目)の間の「後房」と呼ばれるスペースに挿入します。
2014年よりも前の昔のICLレンズには、中央に穴が開いていませんでした。
そのため、レンズがフタのようになって房水の流れをせき止めてしまい、目の中に水がパンパンに溜まって眼圧が急上昇する「急性緑内障発作」を引き起こすリスクがあったのです。
(これを防ぐために、昔は術前にレーザーで虹彩に小さな水抜け穴を開けるという痛みを伴う処置が必要でした。)
現在の「ホールICL(穴あき)」でリスクは激減!
しかし、現在日本で承認・使用されているICLレンズには、レンズの真ん中に約0.36mmの極小の穴(ホール)が開いています。
この小さな穴があるおかげで、目の中の房水はレンズをすり抜けて自然に循環できるようになりました。その結果、房水の流れがせき止められることがなくなり、ICL手術が直接の原因となって緑内障(眼圧上昇)を引き起こすリスクは、ほぼなくなったと言ってよい状態にまで進化しているんです。
もちろん、事前のレーザー治療なども不要になったため、患者様の体への負担も大きく減りました。
「ICL=緑内障になる」というのは昔の常識です。現在のホールICLでは水分の循環が保たれるため、手術そのものが原因で緑内障になるリスクは極めて低いのでご安心ください。
適応検査でわかる「緑内障になりやすい目」とは?
現在のレンズの安全性は非常に高いのですが、そもそも「患者様自身の目の形」によっては、ICLレンズを入れることで緑内障のリスクが高まってしまうケースがあります。
それを調べるのが、手術前の適応検査で行う「前房深度(ぜんぼうしんど)」の測定です。
「前房深度」とは?レンズを入れるスペースのこと
前房深度とは、角膜(黒目)から水晶体(カメラのレンズ)までの距離、つまり「目の中のスペースの広さ」のことです。
ICLはこのスペースにレンズを折りたたんで挿入し、広げて固定します。
もし、もともとこのスペースが狭い(浅い)方がICLを入れてしまうと、目の中がギュウギュウ詰めになってしまい、房水の出口である「隅角(ぐうかく)」という部分が塞がれてしまう危険があります。これが塞がると眼圧が上がり、緑内障のリスクが高まってしまうのです。
スペースが狭い場合は、安全のためにお断りします
そのため、どのクリニックでも適応検査の際に専用の機器でこのスペース(前房深度)をミリ単位で厳密に測定します。
一般的に、前房深度が2.8mm(または3.0mm)未満の場合は、安全性が担保できないため手術はお断り(適応外)となります。
「せっかくお金も用意したのに断られた…」とショックを受けられる方もいらっしゃいますが、これは患者様の将来の目の健康(緑内障リスク)を守るための、医師の誠実な判断ですので、どうかご理解いただきたいポイントです。
もともと緑内障がある人は、ICLを受けられる?
「今すでに緑内障の治療で目薬をしているのですが、ICLは受けられますか?」というご相談もたまにいただきます。
結論から言いますと、原則として、すでに緑内障と診断されている方はICL手術の「適応外(受けられない)」となるケースがほとんどです。
なぜ緑内障の人は受けられないのか?
- 眼圧コントロールが難しくなる: 手術によるわずかな炎症やステロイド目薬の影響で、一時的にせよ眼圧が変動する可能性があり、すでに弱っている視神経にさらなるダメージを与えてしまう危険があるためです。
- 緑内障の治療が最優先: ICLは「生活を快適にするための治療」ですが、緑内障は「失明を防ぐための治療」です。まずは緑内障の治療(眼圧のコントロール)を優先し、目に負担をかけるべきではないというのが眼科医の基本的な考え方になります。
ただし、ごくごく初期の緑内障で、眼圧が完全に安定しており、視野の欠損も全くないようなケースに限り、主治医と執刀医が綿密に連携した上で慎重に手術を行う場合もゼロではありません。
もし緑内障の診断を受けている方でICLを希望される場合は、自己判断せず、必ず事前のカウンセリングで「現在緑内障で通院中です」と正直に申告してくださいね。
目の安全を第一に考えるため、すでに緑内障を発症している方は基本的にはICLをお受けいただけません。失明を防ぐための大切な判断ですので、緑内障の治療に専念してくださいね。
術後に「一時的に眼圧が上がる」ことはある!
ICLそのものが緑内障の原因になることはほぼないとご説明しましたが、「手術直後から数週間の間に、一時的に眼圧がポンと上がる」ことは、実はよくあることです。
これは緑内障になったわけではなく、以下の2つの理由による一時的な反応です。
① 手術による目の中の炎症
メスを入れてレンズを挿入するため、目は少なからずダメージを受けて軽く炎症を起こします。この炎症反応によって、一時的に房水の流れが悪くなり、眼圧が上がることがあります。
② 術後の「ステロイド目薬」の副作用
術後は炎症を抑えるために「ステロイド」という成分の入った目薬をさしていただきます。
ステロイドは非常に優秀な薬ですが、人によっては副作用として眼圧が上がってしまうこと(ステロイドレスポンダーと呼ばれます)があります。
だから「術後の定期検診」が絶対に必要なんです
一時的に眼圧が上がっても、自覚症状(痛みなど)がないことがほとんどです。しかし、高い眼圧を放置しておくと視神経が傷ついてしまいます。
だからこそ、術後の翌日、1週間後、1ヶ月後…といった定期検診で、必ず毎回「眼圧測定」を行うんです。
もし検診で眼圧が高めになっていれば、ステロイドの目薬を弱いものに変更したり、眼圧を下げるための目薬を追加したりして、適切にコントロールします。
医師の管理下で目薬の調整を行えばすぐに正常値に戻りますので、過度に怖がる必要はありません。「よく見えているから」と自己判断で検診をサボるのが一番危険だということだけ、覚えておいてくださいね。
術後に一時的に眼圧が上がることは想定内です。自覚症状がなくても定期検診でしっかりチェックし、必要に応じて目薬でコントロールしますので、検診には必ず通ってくださいね。
まとめ:適応検査と定期検診で、緑内障リスクは回避できる!
ICLと緑内障の関係について、少し専門的な内容も含めて解説してまいりましたがいかがでしたでしょうか。
重要なポイントをまとめますね。
- 現在の「ホールICL」は、手術が原因で緑内障を引き起こすリスクは極めて低い。
- 事前の適応検査で目の中のスペースを測り、リスクが高い目(狭い目)の方は安全のためにお断りしている。
- すでに緑内障を患っている方は、病気の進行を防ぐために原則としてICLは受けられない。
- 術後は一時的に眼圧が上がることがあるため、必ず定期検診でチェックすることが大切。
「緑内障になったらどうしよう…」という不安は、目のことを大切に思っているからこそ湧いてくる正常な感情です。
私たちクリニック側も、その不安をしっかりと受け止め、最新の検査機器を使って「本当にこの方の目にICLを入れても安全か」を徹底的に調べます。
インターネットの情報だけでは、ご自身の目のスペースが広いのか狭いのか、もしかして隠れ緑内障がないかといったことは絶対に分かりません。
まずは、クリニックの無料適応検査にお越しいただき、ご自身の目の形や健康状態を正確に把握することから始めてみてください。
そのデータをもとに、医師とスタッフがあなたにとって一番安全な選択肢を一緒に考えていきますので、安心してお任せくださいね!


コメント